どこへ行くのタクシー

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どこへ行くのタクシー

さまざまな色が氾濫する世界で 真っ赤なTシャツを着た あなたを見つけた それは不思議なほど ルビーの情熱を孕んでいて カレの友達というには いささか毒味を帯びるような 官能の色だった 初めて会ったときから 私はあなたに恋をしていた けれど近づいてしまえば ルビーの炎に取り込まれる ()りつくココロは 急速に吸い寄せられていき 声をかければ始まりそうな 恋の予感を抑えきれない すでに飽きがきているカレ 目の前には青葉の芽のあなた どちらを摘むかは私次第で どちらを選ぶかも私次第で 好きになってはいけないと 自制するほど惹かれてしまう つい手を上げて 路肩に寄せたタクシー 抑えきれない衝動のような 疼く高鳴りを援軍にして あなたから発せられる色へ 蜜を求める危うい蝶 それは赤に染まり それは赤に濡れる ぐいとあなたの腕を引き 一言告げて停まった車へと導く どこへ行きますか 運転手さんが言うと ときめきのある場所へ 私とあなたは目で通じ合った 身体より心を重ねて カレの友達からランクアップ あなたは今日から 私の秘密のカレになる そんなシナリオが生まれた 初々しい恋が芽吹きだした どこへ行くのタクシー 目的地は ときめきの花が乱れ舞う場所 すべてを(ほど)く花に()もる場所
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