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もうすぐ死ぬ私です。余命は30分ってところでしょう。
新緑で燃えるように暑い夏、五月蠅い蝉の鳴き声と対比して、私の生涯は幕を閉じます。
私の近くを力強くハエが飛んでいました。その命を燃やしながら、ハエが飛んでいました。私は少しだけ面白くなってしまいます。もうすぐ死ぬ私と、力強く飛ぶハエの対比は、愉快に思えました。
私は一つの写真を手に取ります。涙が込み上げてきました。そこに映っている二人の女性の内の一人は私です。だっさいジャージを身に着けて、ぼさぼさの髪で写真に写る私と、これまたダサいジャージを身に着けた背の高い、身長160cmある私のさらにプラス10cmはありそうな赤髪の女性。その女性はダサいジャージにもかかわらず、とても凛々しいその出で立ちで、笑っています。
私はその写真をただ見ました。もうすぐ死ぬ私は、その写真を最後に目に焼き付けておきたかったのです。そして私は回想します。その写真を撮ったころの自らの記憶を。
そんな私の回想録です。
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