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それこそ悪役令嬢を誤解して婚約破棄した場合も、悪役令嬢がガチの悪女で婚約破棄した場合も。最終的には、悪役令嬢を救済して溺愛する別の“格上の王子様やら神様やらあやかし様やら”の手によって断罪されることになるからである。
お決まりはこうだ。
『よくも、我が花嫁を辱めてくれたな!その罪、どう償うつもりか!』
『ぐ、ぐぬぬぬぬぬぬぬ!』
格上の王子様やら神様やらに説教され、悪役令嬢を“理不尽に”婚約破棄した婚約者が悪役に貶められ、断罪される。よくて追放、最悪処刑。優子は正直、こういう展開があまり好きではなかった。悪役令嬢を救うため、溺愛してくれる王子様とやらの踏み台にするため、婚約者を不当に貶めているような気がしていたからだ。
むしろ、最初からざまぁしてスッキリするためだけに、“婚約破棄する婚約者”というキャラクターを用意している感さえある。
にも拘わらず、優子はその“婚約者キャラクター”であるジルに惚れ込んでしまったのだった。パッケージのイラストだけを見て。そして――その段階では、ジルがその“ざまぁされる婚約者”だと知らなかったがために。
プレイしてすぐそうだと気づいたのだが、購入してしまった以上もう後にはひけなかった。何より、実際遊んでみたら、ジルという婚約者がけしてゲス悪役でないこともわかってきたから尚更に。
というのも。
――……こんな悪役令嬢だったら、私だって婚約破棄したくなるわ。マジで。
主人公の悪役令嬢・マリーに、まったく共感できなかったがためである。いや、本当に出てくる選択肢が酷いのだ。悪役主人公だとは知っていたが、まさかここまでゲスいとは。何故にプレイヤーに、メイドの靴の中に入れるものを“画鋲”“まち針”“カッターの刃”から選ばせるのか。どうしていじめを行う対象を選択肢で決めさせるのか。
で、そういう悪行を成しまくった結果婚約者にバレて婚約破棄されるという自業自得展開なのに、猫かぶりが上手すぎるがゆえに王子様には“冤罪をふっかけられた”思われて溺愛されるのである。で、婚約破棄した婚約者・ジルは王子様の花嫁を傷つけたことで憎まれた上、最終的には伯爵位を簒奪されたあげく反逆罪で逮捕、拷問された挙句殺されるのだ。正直、あんまりすぎではないか。
優子は探した。推しであるジルが、ざまぁを避けられるルートがないのかということを。
推しのスチルを愛でるため、そして推しを救済するため、気に食わない悪役令嬢を操作し何度も何度も自分にとってのハッピーエンドを探し続けたのである。
ところが、どんな選択肢を選んでも結果が同じ。
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