そのひとことで、ぼくは

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 授業と授業の合間の10分休み、宗方はいつもシャーペンをいじっていた。  スクエア型の黒縁眼鏡をかけている。前髪が眼鏡にかかるくらいまで伸びている。後ろもサイドも長くて毛量が多いから重く見える。今っぽさとは反対をいってる髪型だ。  部活には入っていないようで、かといって成績が良いわけでもない。  こう言っちゃなんだが、宗方が過ごす時間に楽しい瞬間ってのはあんのかな? って思ったときもある。  次の20分休みに校庭でクラスマッチの練習をすることになっている。1時間目の体育終わりにみんなでそう決めたが、誰も宗方には教えてないんじゃないかと、ふと気になった。 「あのさ」  声をかけると、宗方は俺をのそりと見上げた。 「次の20分休み、校庭でクラスマッチの練習するっちゃけど。誰かに聞いた?」 「ああ、うん、そうなんだ。でも、ぼくは出ないほうがいいけん……」  机の上に出してあるノートに名前が律儀に書いてある。  宗方譲(むなかたゆずる)。  ゆずる、なんだと妙に納得した。 「クラスマッチだからみんな出るけん、出んとかはやめとこうぜ。べつにみんな上手いわけじゃなかよ」 「あ、うん。ごめん。じゃあ、ぼくは30秒とかでよかよ」  なんだか悲しくなった。  下手でもいいから、クラスマッチくらい楽しんで過ごしてほしいな。  そう思ったが、スポーツが苦手ならすこしでも関わりたくないだろうか。  とりあえず、次の休み時間はみんなでやろうぜと声をかけて宗方の席を離れた。
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