そのひとことで、ぼくは

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「んー、とりあえず最後の3人づつ交代な。なんていうか、とりあえずみんなノーマークになるように動け。ノーマークならシュート撃っていいけんが」  余っていた最後の3人に、宗方がいた。眼鏡に前髪がかかっているから、表情が読めない。  最後に入った3人は運動が苦手な陰キャ組だった。パスを回してもムダだと思ったか、古賀はむりやり自分でドリブルして中に切れ込んでいった。  といっても、一人で全員を抜けるわけがない。目の前にディフェンスが立ちふさがり、古賀は下がりながらめちゃくちゃなフォームでシュートを撃った。  思わず苦笑いしたが、その目線の先に俺は違和感を感じた。  一人、生真面目にボックスアウトして、ポジションをとっているやつがいた。  宗方だった。  上手い。  思わず小さな声を漏らした。  リングに弾かれたボールめがけてみんなが飛ぶ。一番リバウンドを取りやすい位置にいた宗方は、控えめに飛んだが、右手がボールに届いていた。  俺は宗方を見ていた。宗方はリバウンドに手が届くと予想していたのだろう。首を振り味方を探していたように見えた。届いた右手でそのまま古賀の方へとボールを弾いた。  古賀がそのボールをキャッチしてジャンプシュートをリングに沈めた。 「っしゃーーー!」  古賀がガッツポーズをして、クラスのみんながワッと盛り上がった。何人かが古賀に駆け寄りハイタッチしている。  この光景を見ると、古賀の個人技で入れた点のように映る。  いや、違う。  この古賀の得点は宗方がお膳立てをした。みんなの目にはただ落ちてきたボールが宗方の手にあたって古賀に渡ったと思うだろうが……。  それから宗方にはボールが回ってこなかった。  さっきのは偶然だろうかと見ていたが、宗方は古賀がドリブルで抜きやすいようにスクリーン(相手の背後に立ち、壁になって味方が突破しやすいようにする技術)をかけたり、リバウンドをとるためのボックスアウトは欠かさなかった。  あいつ、経験者だ。  間違いない。
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