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電話を終えた結希はボックスから出ると、輝に向かって親指を立てた。
「これで完了。あと、……ん?そっちも終わった?じゃあ警察来るから、ちっひーは離れてね。………うん、分かった。そこで合流しよう」
どうやら、ちっひー側も仕事を終えたようだ。色々と訊きたい輝は結希に質問攻めをした。
「さっき、どこに電話してたんだ?あと、ちっひーって誰だ?」
「えっと、まず一つ目、警察に電話してた。匿名でお金をばらまいた人を見たって伝えたんだよ」
「え、それで警察が駆けつけたら、あいつは、冬馬は捕まってしまうんじゃ……」
冬馬とはさっき輝と話した友人のことだ。結局無理なんだと落ち込むと、結希は腕を組んで怒った。
「ちょっと、私を見くびらないでくれる?君の友達も救います!カバンが冬馬を救う役割を果たしてくれるはずだから。まあ私の指示通り『自分がお金をばらまいた』って彼が言ってくれればだけど」
「お金をばらまいても逮捕されないのか?」
「お叱りを受けるぐらいかな。他の人は、ばらまいたお金が不当で得たものだと証明されたら逮捕される。ばらまいた側は、もう組にいたくないって人がやること、つまり組の裏切り者だから彼は捕まらないと思うよ」
と、結希は言った。なるほどと納得する。だが、もうやるなと、輝は結希からお叱りを受けた。
「で、二つ目の質問。ちっひーは裏で色々動いてくれる協力者。近くのお店で合流することになったから、そこで改めて紹介するね」
店は路地裏を何度か曲がったところにあるらしいのだが、その前に前方から複数人の男が歩いてきた。そして、街灯に照らされた姿に輝は足を止める。
「探したぜ、輝。よくもあの金を盗みやがったな」
前に立ち塞がるごつい四人組は、橘組の中でも腕っぷしが強いメンバーだ。
「あのー、そこ通りたいので、退いてくれません?」
結希が前に出て、そんなことを言い出した。輝は彼女の行動に驚くが、こいつらの前に出るものじゃない。輝は結希の腕を掴んで後ろに隠した。
「かわいい嬢ちゃんじゃないか。輝じゃなくてオレの女に」
「やだ。いかにも鍛えてますって人、好みじゃない」
結希は輝の後ろから顔を出して、そう返した。
「残念だなー。オレの女になったら見逃してやろうと思ったんだが。悪いがここで死んでもらおうか」
一番前にいた男が言い終わると同時に、四人が一斉に飛びかかってきた。
「輝は左二人!」
結希は左に輝を突き飛ばすと、右二人に向かって走っていった。
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