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「……そうなのか?」
「ビルに囲まれた街で、唯斗さんの体は半分しか写ってないし、それに唯斗さんは誰かに背中を押されたような形で道路に飛び出したんだ」
そこまで言うと、結希は髪をぐしゃっと握りつぶした。
「唯斗さんが事故に遭う前、私になにか言ってたんだけど思い出せない。それが悔しくて……」
結希は頭を抱えてうずくまった。
「何があったのか分かってるのに、肝心な部分が思い出せない……」
「結希……」
うずくまって震える結希に輝はかける言葉が見つからず、言葉に詰まってしまった。
結希は今まで犯罪者の心に寄り添って、支える言葉を伝えていた。今は輝が伝える番なのに何も言えない。
結希を見つめ続けるのが辛くなった輝は、勢いをつけて立ち上がった。
「……?」
俯いていた結希は驚き、顔を上げて輝を見た。
「案内してくれないか、唯斗さんのところに。俺もその人に挨拶したいし」
輝は病院の方を向き、思ったことをそのまま伝えた。
「……どれだけ悔やんでも起きてしまった過去は変えられない。なら今は目の前の出来事を、悔いのないように行動に移すべきだと思うんだ」
「……案内することが今私にできることってわけか」
結希も勢いをつけて立ち上がり、輝の隣に並んで病院を見る。
「ここで輝を案内できなくても、私は別に悔いが残ることはないと思うけど」
結希の言葉に輝は少し笑ってしまった。
「確かにな。でも俺はここで帰ったら悔いが残る」
輝は隣に立つ結希を見おろすと、示し合わせたかのようにちょうど結希も顔を上げて輝を見た。
「じゃあ行こうか。私に助手ができたって聞いたら、唯斗さん驚くだろうなー」
輝はまだ言葉で救うことはできない。ならば今は結希の側に居続けることが、輝にできる精一杯の支えだ。
歩き始めた結希に置いていかれないように輝は彼女の背中を追いかけた。
3、真の正義は 〜完~
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