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輝は走りながら、舞が言っていた公園は原山の事件で結希と話し合ったところだろうかと考えていた。
公園は、知らない人にとっては素通りするような奥まったところにある。そう思うと、迷わず公園に向かって歩いていた結希はその場所を知っていたということだ。それは病院に通っているということなのだろう。
公園に入り結希の姿を探す。周りを見渡すと、結希はベンチに座って病院をぼんやりと見つめていた。
「……結希」
輝は近づいて声をかけるが、結希は全く気づかない。
どうしたらいいのだろうか。
輝は前に、ぼんやりしていたときに結希に頬をつねられたことを思い出した。彼女の頬をつねってもいいだろうか。
前に不意打ちにやられたのだ。こちらもやり返してもいいだろう。
「よし」
輝は結希の頬に手を伸ばす。あともう少しで届くとなったそのとき、彼女が急にこちらを向いた。
「うわっ!」
「……うわっ!って失礼な。というかこの手はなに?」
結希は、中途半端に伸ばされた輝の手を指差した。
前までの輝なら、曖昧にごまかして手を引っ込めていた。だが今回はそのまま手を伸ばして、結希の頬をつねった。
「いったぁ!なに?」
「……この前の仕返し」
「この前?……ああ、あのときの。念に持ってたの?」
呆然とする結希の隣に座ろうとしたが、ベンチの横に自動販売機があることに気づき、輝はそこに向かう。
「寝起きでやったら念に持つだろ。で、なんか飲まないか?」
結希は頷いて立ち上がろうとしたが、輝はそれを制す。
「俺が払うから。結希が飲みたいものどれだ?」
「んー。じゃあ、ミルクティーで」
輝はミルクティーと、自分用にココアを選んで結希に渡した。
「ありがと。というか私のこと名前で呼んでくれるんだ」
「いいだろ別に」
輝がココアを飲むと、結希もキャップを開けて一口飲んだ。そして輝の方を向く。
「なんでここにいるって分かったのかは聞かない。多分、舞さんが伝えたんだろうから。それより気になるのは輝が来た理由。ここに来たのは何で?」
「それは……、なんとなく放っておけないなと思って」
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