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 病院内に入ると、結希はエレベーターに乗って二階へ向かった。そして降りて一番端に向かって歩く。 「輝にまだ伝えてなかったけど、実は唯斗さんが事故に遭った原因は、橘と関係あるんじゃないかって考えてるんだ」 「……え?」 「唯斗さんは橘について調べててね。彼を警察に突き出せる色んな証拠が集まったところで事故に遭ったんだ」  前に、危害を与えていたら謝らせてほしいと言った輝に結希は、自分には何もされていないと言っていた。他の誰かがされたのだろうと思っていたが、まさか結希の尊敬する人だったとは思わなかった。 「……ごめん」 「何に」  結希は輝の見ずにそう訊いてきた。多分、輝が謝る理由が分かっているのにわざと訊いているのだろう。 「前にも言ったけど、輝は何もしてないから謝る必要ないんだよ。寧ろそうやって謝られる方が嫌なんだけど」 「ご……」  また謝りそうになったところで、結希に睨まれる。 「……失礼しました」 「何それ」  言い直した言葉に結希は笑う。そして一つの病室の前に到着してドアを開けた。するとそこには先客がいた。 「え、冬馬?何で?」  唯斗の病室には冬馬と、彼を雇った男の人がいた。確か結希にケンちゃんと呼ばれていた人だ。そして冬馬は目を見開く。 「輝こそ何で?あ、新藤さんから訊いて連れてきてもらった……ってわけではなさそうだね」  冬馬は結希を見て話していた。彼の視線を追って結希を見ると、彼女も驚いた表情をしていた。 「え、ちょっとケンちゃんどういうこと?唯斗さんと橘の関係は知らないでしょ?」 「ん?確かにそのことを俺は詳しく知らないが、冬馬と山内(さんない)唯斗さんが知り合いだってことを結希は知らなかったのか?」 「え!」  ケンちゃんの口から山内という名前が出てきて、輝はベッドに駆け寄る。その様子を見た結希は首を傾げる。 「どういうこと?」 「山内さんは、組の中で浮いていた輝と冬馬を気にかけていたらしくて、色々と世話になった人だって冬馬は言ってたよ」 「ということは、唯斗さんも組員だったってこと?」  結希は輝の隣に並んで唯斗を見おろす。彼女の様子を窺うと、結希の顔は真っ青になっていた。
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