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暗い気持ちで病院を出ると、日は沈みかけていた。夕日の眩しさに輝は目を細める。
結希は木の下で、スマホを耳に当てて誰かと会話をしていた。彼女の表情は険しく、声をかけられない空気を醸し出していた。
電話を切って振り向いた結希と目が合うと、彼女は早足にこちらへやってきた。
「雅人から電話があって、組員が住んでいた家が火事で燃えてるらしい。私、今から行ってくる」
「えっ、ちょっ」
輝の返答も聞かず走り出そうとした結希を、舞が止める。
「待って。あたしにも協力させて」
「こっちでもできることがあったら協力するよ」
舞の他に、千紘や健太そして冬馬も集まってきた。そして結希の指示を待つ。
「ありがとう。それじゃあ……、舞さんとケンちゃんは病室に戻って唯斗さんの側にいて。火事の原因は分からないけど、放火だったらその犯人が来そうな気がして」
舞と健太は任せてとしっかりと頷いた。次に結希は千紘たちの方を向いた。
「ちっひーと冬馬は事務所に戻って情報集めお願い。火事の原因と橘の動きを探れるだけ探って」
「了解」
千紘たちが頷いたのを見届けた結希は、今度は輝を見る。
「輝は私についてきてほしい」
始めからそのつもりだ。輝は大きく頷いた。
「みんな、私に協力してくれて本当にありがとう。これから何が起こるか分からないけど、ここにいるメンバーなら安心して任せられると思ってる」
結希は周りを見渡して、全員としっかりと目を合わせた。
「最後に。この事件はどんな些細なことでも何かあったら私に連絡してほしい。……この場所にみんなが無事に戻ってこられますように。それじゃあ行こう!」
結希の掛け声で全員が指示された行動に移し始める。輝は結希とともに火事現場へ走って向かった。
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