思い出

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思い出

そうは言うけど、僕には何としても海に行きたいという気高き思いがある。すると、ウナギさんは不安なことを言い出す。 「今の時期は海に行ってもクラゲだらけだな」 「クラゲ?」 「そう。海水が暖かくなると、奴らが増えるんだよ。刺されると痛いから海水浴に来る人間も減るのさ」 「えっ? じゃあ、水着の美女は?」 「ん、水着の…。たぶんサーファーしかいないと思うな」 「そうなのー。それはしょっぱい!」 「一体何がしょっぱいんだい?」 「いや、ちょっと…」 なんてことだ。海に行っても水着の美女はいないぞ。これでは海に行く意味がない。何のためにしょっぱいのを我慢していると思っているんだ。僕は重大な決断をすることになった。 「あのさあ、海は諦めて名もなき川に帰るよ」 「そうかい。またね」 「じゃあね」 こうして夏の終わりの冒険はしょっぱい思い出だけが残った。
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