少年宇宙飛行士

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少年宇宙飛行士

 大学から帰ると、天城はパソコンに向かった。  デスクの上には地球儀と天文時計のレプリカ。  太陽系の惑星が、少しずつ動いていく様子が机上に再現される。  壁には人工衛星と、スペースシップの位置が映し出され、少しずつ流れていく。  まだ陽が高いが、星々の(またた)きと超新星、ブラックホールの図像が天井までびっしりと現れる。 「JAXEからメッセージが届いています。  読み上げますか」 「読んで」  AIが感情を込めて朗読し始める。 「天城 空良様。  宇宙航空研究開発省。  先日実施いたしました『ミッション・オブ・ロリー・ポリー選抜試験』に合格しましたのでご報告いたします。  つきましては ───」  広げたデンマーク・ケーキをつまみ、超新星の画像を睨んでいた眼が泳いだ。 「受かった」  弾かれたように飛び上がり、階段を駆け降りる。  静まり返ったリビングに、タイタンの模型が飾ってあった。  妖しく緑に照らしだされ、神秘の虹と呼ばれる色とりどりの大気と地面がゆっくりと対流する様子が飽きさせなかった。  中学校から飛び級で大学へ入り、宇宙開発に関する勉強をしながら宇宙飛行士選抜試験を受けた。  二千人を超える志願者の中、成績1位で合格。  宇宙工学だけでなく、英語、ロシア語、中国語をはじめ、あらゆる分野を究め宇宙への情熱と危険を(かえり)みない勇気を持つ。  すべてを兼ね備えた宇宙飛行士に最年少で仲間入りを果たした。  そして、最難関のミッションに応募し合格を果たしたのだ。  嬉しさのあまり家の中を走り回り、友人に片っ端から連絡を取った。  メッセージ確認後、JAXEのSNSで即時公開されたため、向こうからもメッセージが送られて来る。 「おめでとう」 「いいなあ」 「宇宙人紹介して」  さまざまな声色で再生される。
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