07. 露呈

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あまり感情を見せることのない本田が怒ってる。 驚いて(ひる)みそうになりながらも、自分を鼓舞するかのように主張を繰り返した。 「ま、まだ……一緒にいたいです」 「車で送る間は一緒にいられます」 「そうじゃなくて……ちゃんと一緒にいたい」 震える声でそう伝えると、本田はいつもよりずっと冷ややかな表情で返した。 「承諾できません。お帰りください」 表情だけでなく声も冷たく感じられて、怖くて思わず俯く。 それでもなお怯みたくないと思うのは、きっと心の奥底で怖さとは違う(かす)かな期待を抱いているせいだ。 それを間違いだと気づきもせずに首を横に振る。 「嫌……帰りたくない」 「今のあなたは酔っていますし、9日後には少し会えます。それまで頭を冷やして――」 「嫌です」 本田のスーツの袖をグッと掴むと、本田はハーッと息を深く吐き出した。 「――それまで頭を冷やして落ち着く時間を僕にください、とお伝えしたかったのですが、嫌ですか?」 「嫌!」 迷いなくそう答えてから気づく。 ……え? 私じゃなくて、本田さんが頭を冷やす時間?  恐る恐る本田の顔を見上げると、穏やかさとは真逆の冷淡で獰猛にも見える瞳が、闇の中で月の光に照らされて見えた。 「今夜は優しくなんてできませんよ?」 怖いのにめちゃくちゃにしてほしい。 この感情は贖罪(しょくざい)? それとも渇望?  ゴクリと唾を飲み込むと、本田の腕に震える手でギュッとしがみついた。
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