1376人が本棚に入れています
本棚に追加
「次は本田さんの番ですよ?」
「え?」
「私は今日起きたことや思ってることをちゃんと伝えました。だから本田さんもちゃんと言ってください。わからないままなのは嫌です」
すると本田は観念した様子で深く息を吐き出し、ボソボソと話し始めた。
「みっともない真似をして怖がらせて申し訳ありませんでした。自分に、こんなにも強烈で……真っ黒で抑えられない感情があるなんて知りませんでした。本当に申し訳ない」
躊躇いつつそう言った本田の抱きしめる腕が僅かに震えていて、宥めるように背中を撫でた。
それは……もしかして初めて嫉妬したってことかな、なんて野暮だから聞かないけど、もしもそうならちょっと特別感がある。
……あー、ダメだダメだ。嫉妬を喜んで痛い目を見たばかりなのに。
「本田さんの言う『真っ黒で抑えられない感情』って、どういうものなんですか?」
「それは……お話ししなければなりませんか?」
「できればお願いします」
少しの間沈黙した本田は、再び口を開いた。
「それでは……なるべく言葉にしてみますが、不快と感じるものだったら申し訳ありません」
「はい、気にせず何でもどうぞ」
「……真央に対して、相手が男性だからと友達付き合いをやめさせる権利も、あの男がいるからとバイトをやめさせる権利も、僕にはありません」
「そう……ですか」
「ですが……」
そう言葉を切った本田は、抱きしめる腕にグッと力を込めた。
「ほかの男性があなたに無遠慮に触れるのは、どうにもこうにも殺――…………」
……うん? 本田の言葉が『どうにもこうにもさつ』で止まったままだが何だろう。
さつ……さつ……さつまいも。
どうにもこうにもさつまいも……なわけないな。
さつ……薩摩揚げ、撮影、五月晴れ……
ほかはちょっと物騒なのしか思い浮かばないけど……いやいや、まさかね。清く正しい本田さんのお口がそんなこと言うわけないよ。
それに、そこまでの気持ちを私に対して持ってないよ~。
やだなぁ、もう。
最初のコメントを投稿しよう!