07. 露呈

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続きは何だろう、と目をぱちくりさせながら暫く待っていると、小さく咳払いした本田の言葉が続く。 「ですが、ほかの男性があなたに無遠慮に触れるのは到底許し難く、苛立って仕方がありません」 『どうにもこうにもさつ』がどっか行っちゃった、と気になりつつも返事をした。 「ご、ごめんなさい。今後はもっと警戒します」 「そしてほかの男性の前で気を緩めたあなたにも腹が立つ」 「それは弁解の余地もございません。すみませんでした」 「でも……そんなにも寂しがらせて、挙句の果てに無理矢理な行為をした未熟すぎる自分にはもっと腹が立って仕方がない。ごめん……真央」 丁寧な言葉遣いと素の言葉遣いを混ぜこぜにしながら震えてるあなたを、愛おしいと思うのはおかしいのかな。 嫉妬も、自分への厳しさも人一倍強くて、でもそれがすごく愛おしくて、大丈夫だよってフワフワの毛布で包んであげたい気分だ。 「本田さん、大好きです」 「うん……俺も真央のことがすごく好きなんだ」 本田の言葉にハッとした。「すごく好き」って言ってもらえた……。 「嬉しいです」 本田の腕に包まれながらこっそりと頬を緩めてニマニマしていると、本田の言葉が続く。 「……会えなくて苦しかった」 「え?」 「今年の正月の時点で真央とこういうふうに付き合うかどうかなんてわからなかったから、例年通りに夏の仕事の予定を入れた。でも神戸でのバトラーの仕事は今回で最後だ。これ以降は断った。これからは少ない日数でもきちんと休みを取るようにするし、志艶さんには仕事をし過ぎだって言われてるから、それ以外でももう少し休むようにする。これまではプライベートなんてどうでもよかったけど、もう違う。プライベートも大事にしたいんだ」 「本田さん……」 「仕事量が多いことには変わりないから、普通の会社員よりはどうしても忙しい。それでも俺にとって必要な時間だって身に染みてわかったから、これからは真央との時間を大切にしたいって思ってる」 自分との時間を大切にしてくれようとする、いつもよりちょっとだけ幼く思える本田のことが、愛おしくてたまらない。
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