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「敬語じゃない本田さんも好きです」
そう言って本田の顔を見上げながらへへへっと笑みを向けると、本田はハッとしたのち、げんなりとした表情で目を背ける。
「みっともない姿を晒して申し訳ありません。晒したくはないのですが……」
「どちらも素敵だから別にいいのに」
「……いいえ。本当に……避けたい」
さすがいつも完璧なバトラー本田。パーフェクトな姿を崩したくないということなのだろう。そういう本田さんもかっこいい!
「ねー本田さん? 今夜は泊まってもいいですか?」
するとちょっと迷った様子を見せた本田がおずおずと答えた。
「構いませんけど……ご両親が心配なさいませんか?」
「夜中に帰るほうがびっくりすると思うので、お母さんにメッセージを送っておきます。『蓮香ちゃんの家に泊まる』って」
「嘘をつくんですか? それは許容し難い」
「この時間に急に『彼氏のところに泊まる』って送ったら、それこそびっくりしちゃいます。優しい噓ってやつですよ」
そう言ったら本田はフッと笑った。
「真央は結構悪い子なんですね」
「ダメですか?」
「いいえ。それでも……好きですよ」
じっと見つめて言われたその言葉は『サラリ』ではなく、もっと潤いを感じられるものだ。
「本田さん……今夜ずっとそばにいてください」
そう言ったら、本田がホッとしたような顔で微笑む。
「ええ、お望みであれば時間の許す限り」
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