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【プロローグ】
できることなら、この人の黒縁眼鏡になってみたかった。
細長くて繊細な中指で、愛でるように時折キュッと黒縁眼鏡を持ち上げる。
遠くから見つめるばかりだったこの人の、そのしぐさが好きだった。
スローモーションみたいにそのしぐさを何度も脳内再生して、そんなふうに優しく愛でてもらえるなら、ずっとそばにいられるなら、眼鏡に生まれ変わったとしても最高に幸せ……なんて思っていたのに。
「あの……好きです! どうか私とお付き合いをしてください!」
「お断りいたします」
坂崎橋真央(さかざきばし・まお)、あと2か月で19歳。
秒で失恋したこの瞬間から動き出した、あなたを追いかける恋。
変えたい自分を一枚一枚脱ぎ去って、あなたのもとへ直走る。
桜吹雪の中で待つ、あなたに会うために……。
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