思いもかけずに

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と、俺の携帯に、一応、1つ先輩の山村凌(やまむら りょう)から電話が掛かってきた。 山村も高校生の時、料理部に入っていたから、俺達はそこで出会った。 高校を卒業した山村は今は調理師の専門学校に通っている。 『保ー、テレビ観たよう。僕も料理したかったー』 「は?」 俺はテレビに映ったことをすっかり忘れていた。 『保は観てないのう?天津飯を作った保、カッコ良かったのにー』 山村の言葉に俺は記憶を遡る。 そういや、数日前に突然これで何か作れとか言われた事があったな。 まさか本当にテレビに映るとは思わなかった。 「俺が観るかよ」 『じゃあ、今から皆でウチへおいでよう。偶然だけど録画されたからさー』 「やなこった。それに香澄も鈴木も受験勉強中だろ」 香澄とは恋人の諸橋香澄(もろはし かすみ)、鈴木は友人の鈴木航(すずき わたる)のことだ。 どんな風に映ったのか? 気にならないと言えばウソになるが、このクソ暑い中、何で山村んちまで行かなきゃならねーんだ。 めんどくせー。 『録画を観た後で勉強会を僕の部屋でやればいいじゃん!パパもママも旅行中だし!』 「俺はケーキ作りがあるからパス」 俺にはパティシエになりたいと言う夢が有る。 卒業までの課題。
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