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その課題とは、親父を納得させるケーキを作ること。
そこで初めてパティシエの卵、夢を叶える為のスタート地点に立てる。
それが出来なきゃ俺は千夜組を継ぐしかなくなる。
『ゔっ…』
電話の向こうで山村が言葉に詰まったのがわかった。
山村は、俺がパティシエを目指す為の課題を知っている。
山村も将来、自分の店を持ちたいと言う夢が有るから、俺の夢の邪魔は出来ねーと思ったんだろ。
「じゃあな」
そう言うと俺は一方的に電話を切った。
ところが又、直ぐに電話がかかってくる。
「しつこいぞ、山村」
『えっ…?山村先輩が、どうかしたの?』
鈴を転がしたような声に、俺はよくよく通話画面を見る。
と、『山村のバカ』から『香澄』に表示が変わっていた。
「悪い…表示画面をよく見てなかった」
『やだあー、千夜くんったら』
電話の向こうで香澄が笑いながら、そう言った。
一方で俺は、まだ日中の今、香澄から電話がきたことに疑問を持った。
まあ…香澄からなら、いつきても良いけどよ。
「それより珍しいな。てっきり受験勉強にご執心かと思ったぜ」
香澄がK大学の教育学部を受験するのは俺も知っていた。
将来は高校教師になりたいらしい。
『千夜くん、テレビに出たの知らないの?』
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