思いもかけずに

6/10
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
山村は、まるで解っていなさそうだが、俺は鈴木の言葉に察しがついた。 「妬んでくる奴等も居るって事か」 『そうです、それでなくても千夜くんはモテます。くれぐれも気をつけて下さい』 『大丈夫だよう。僕の保は嫉妬されても、けちょんけちょんにするから!』 「僕のって、俺は山村の番になった覚えはねー」 だが、確かに妬んで絡んでくる連中が居ても返り討ちさせる自信はある。 『そうストレートに来る人達だけなら良いんですけどね…』 鈴木は、まだ不安そうな声色だった。 鈴木の言わんとしてることは、この時の俺には、わからなかった。 『鈴木くん、気にし過ぎ!ところでさあ…』 山村が話題を変えたことで、この話は今夜は、ここまでになった。 翌朝。 まだまだ外は残暑が厳しかったので、俺は組員の田中に車で学園まで送ってもらうことにした。 車の中はクーラーが効いている。 「坊ちゃん、あそこに見えるのは香澄お嬢さんじゃありやせんか?」 田中の言葉に視線を前に向けると、確かに香澄の後ろ姿が見える。 「丁度、後部座席が空いてる。田中、香澄も乗せて行くぞ」 「かしこまりやした」 田中は香澄の直ぐ横まで進むと車を止めた。 俺は助手席から車の窓を開ける。 「よお、香澄」
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!