思いもかけずに

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「坊ちゃんとお嬢さんを降ろして良いものか…」 田中も、いつもと違う校門での様子に、ちと警戒してるようだ。 「ひょっとして…千夜くんをテレビで観たのかしら?でも、そうだとしても恋人の私が、ついてるから大丈夫!田中さん、ドアを開けて下さい」 どこか不愉快そうに香澄はそう言うと、田中が開けたドアから車を降りた。 昨夜の鈴木の予想、当たったな。 俺はそう思うと覚悟を決めて香澄に続いて車を降りる。 その途端に。 女共「キャー!!」 黄色い声に耳をつんづかれた。 その喧しさ、山村の声を凌ぐ程だ。 ったく、アイドルじゃあるめーし。 「千夜くん!黒のリムジンで登校なんて、リッチー!」 「料理も出来るし、最高!」 俺と香澄は、たちまち女共に囲まれた。 中には遠くからコッチを見つめてる女も居る。 こんな事なら料理をしなきゃ良かったぜ。 「行きましょ!千夜くん」 「あ、ああ」 俺は女共の勢いに負けそうになったが、香澄に腕を組まれ、人垣を掻き分けて、校舎内へと進んだ。 「香澄、良いなぁ!羨ましい!」 「千夜くん!今度、料理教えてねー!」 背後から聞こえる女共の声に、香澄が。 「言っとくけど!千夜くんは私のものだからね!」 後ろを振り返って、啖呵を切った。
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