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 文哉は中学生。野球部で夕方6時まで練習していて、とても疲れている。だけど、強くなるためには練習しなければ。  今は秋。少しずつ日が暮れるのが速くなってきている。そして、涼しくなってきた。だけど、日中は暑い日々が続いている。だけど練習を頑張らないと。 「今日も疲れたな」  文哉は帰り道を自転車で走っていた。家まではもうすぐだ。この雑木林を抜ければ、家はすぐそこだ。もうすぐ晩ごはんが食べられる。 「早く帰ろう。今夜は麻婆豆腐だ」  この近くの雑木林は、誰も入った事がないという。ここに行った人は呪われる、生きて帰ってこれないと言われている。そのため、誰もここに近寄ろうとしないという。 「あれ? この大きな卵は何だろう」  と、文哉は道端で白くて丸いものを見つけた。何かの卵だろうか? 卵にしてはあまりにも大きい。ダチョウの卵だろうか? いや、ここにダチョウは生息していない。じゃあ、何の卵だろうか? 「持ち帰ろう」  文哉はその白い物をリュックに入れた。そして、文哉は再び家に向かって自転車をこぎ出した。 「何とか入った。大事に持って行かないと」  文哉は恐る恐る走っていた。割らないように、慎重に。  数分後、文哉は家に帰ってきた。家からは、麻婆豆腐のにおいがする。やっぱり今日は麻婆豆腐だ。文哉は嬉しくなった。 「ただいまー」 「おかえりー」  文哉はすぐに2階に向かった。私服に着替えてからリビングに行こう。母はその様子を嬉しそうに見ている。  部屋に戻ってきた文哉は白い物を取り出した。やっぱり卵のようだが、こんなに大きいのはおかしい。 「うーん、この卵は何だろう。まさか、ダチョウ? いや、ここにはダチョウは生息してないだろう。まぁいいか。生まれてからのお楽しみだ」 「文哉ー、ごはんよー」  その時、母の声が聞こえた。晩ごはんができたようだ。まぁいい。晩ごはんを食べてから考えよう。 「はーい!」  文哉は1階に向かった。その時、卵が動いた。やはり、これは何かの卵のようだ。だが、動いたのを文哉は知らない。  部屋に戻ってきた文哉は考えていた。これが何なのか、全くわからない。だけど、持っていたら、何かいい事があるかもしれない。大切にしよう。 「うーん・・・」  文哉は外を見た。もうこんな時間だ。そろそろ勉強をしよう。 「まぁいいか。勉強しよう」  文哉は勉強をしようとした。やらなければいけない宿題もある。早くやらないと。 「グルルル・・・」 「えっ!?」  突然、何かの鳴き声が聞こえた。だが、誰もいない。聞いた事がない鳴き声だ。 「気のせいか・・・」  文哉は宿題を始めた。よくわからないけど、直にわかってくるだろう。さて、勉強をしよう。  夜11時ごろまで、文哉は勉強をしていた。受験はまだまだだけど、今のうちに頑張ろう。そして、いい高校、大学に行くんだ。 「さてできた。もう寝よう」  文哉は部屋の明かりを消し、ベッドに横になった。色々あったけど、もう疲れた。今日は寝よう。そして、明日に備えよう。  文哉が寝て数時間後、辺りが光っている。こんな深夜に何だろう。思わず文哉は起きてしまった。どうして真夜中にこんなに光っているんだろう。 「文哉さん。卵を持って来てください」  誰かの声が聞こえた。まるで母のように優しい声だ。よくわからないけど、悪い事をしない人のような声だ。 「ん?」  文哉は首をかしげた。こんな夜遅くに、誰が呼んでいるんだろう。 「来てください」 「誰?」  文哉は辺りを見渡した。やはり誰もいない。外にいるんだろうか? 「いいから来てください」  文哉はその卵を持って外に出た。だが、誰もいない。だが、ある場所から光が差し込んでいる。よくわからないけど、その光のある方向に行けば、その理由がわかるだろう。 「誰もいないな・・・」  文哉が歩いていくと、雑木林の入り口に洞窟がある。何度もこの辺りを通っているけど、洞窟なんてなかった。光はその洞窟の中から漏れている。 「あれ? ここに洞窟ってあったっけ?」 「この洞窟に入ってください」  声は洞窟の中から聞こえてくる。どうやらこの卵の持ち主のようだ。行ってみよう。  洞窟の中は明るい。照明などの明かりもないのに。どうして明るいんだろう。何か不思議な力で光っているんだろうか? 「この先には何があるんだろう」 「キュー!」  その時、何かの声が聞こえた。何かわからないけど、かわいらしい声だ。文哉は辺りを見渡した。だが、何も見当たらない。 「ん?」 「キュー、キュー」  と、文哉は何かに気づいた。足元で何かがパジャマの下の裾を引っ張っている。文哉は下を向いた。と、そこには緑色の小さなドラゴンがいる。まさか、ここはドラゴンの洞窟だろうか? だとすると、この卵のドラゴンの卵だろうか? 「ド、ドラゴン?」 「来てください」  と、その先で再び声が聞こえた。やはり、あの洞窟の向こうから聞こえるようだ。でも、その先には何がいるんだろう。まさか、この小さなドラゴンの母だろうか?  その奥にいると、とても大きなドラゴンがいる。文哉の予想は当たっていた。その時、文哉はわかった。自分を誘っていたのは、この大きなドラゴンだったんだと。 「えっ、ド、ドラゴン?」 「はい、そうです。あなたが拾ったのは私が産んだドラゴンの卵です。この度はご迷惑をおかけしました」  やはりこの卵はドラゴンの卵だった。まさか、ドラゴンの卵を拾ってしまうとは。 「いえいえ」  文哉は少し照れた。褒められるのって、いつぐらいだろう。あんまり褒められた事がない。まさかドラゴンに褒められるとは。思っていなかったけど、とてもいい事をした。 「返してくださって、ありがとうございます」 「どういたしまして」  と、卵にひびが入っている。もうすぐ生まれそうだ。まさか、ドラゴンが生まれる瞬間に居合わせるとは。何かが生まれる瞬間は感動的だ。どうしてだろう。 「生まれる?」 「生まれるみたいですね!」  ドラゴンは嬉しそうな表情だ。生まれる喜びは、どの生き物も共通のようだ。  程なくして、卵が割れて、そこから白いドラゴンが生まれた。まだは開ききっていないものの、元気に鳴いている。 「キュウ!」 「か、かわいい!」  文哉は生まれたドラゴンの頭を撫でた。白いドラゴンは喜んでいるようだ。 「無事に生まれましたね」  と、ドラゴンは空を飛び、文哉の肩に乗った。そして、文哉の頬をなめた。 「アハッ、くすぐったいくすぐったい」  文哉は嬉しそうだ。それを見てドラゴンは笑みを浮かべた。 「気に入られているようですね」 「かわいいなー」  文哉はあっという間に気に入った。とてもかわいい。連れて帰りたいぐらいだ。だけど、こんなのを連れて帰ったら、みんなびっくりするし、たくさんの人が来て大騒ぎになるだろう。だから、残念だけど連れて帰れない。  文哉は外を見た。そろそろ夜が明けそうだ。まさか、こんなに遊んでいたとは。それとも、時間が乱れているんだろうか? 「そろそろ朝ですね。帰らないと」 「うん」  文哉は寂しそうだ。もっとここにいたいのに、元の世界に戻らないと。みんなが待っている。 「卵を返してくれて、ありがとうございました」 「いえいえ。それじゃあ、僕はこれで帰ります」  文哉は洞窟を引き返していく。ドラゴンはその様子を見ている。みんな、嬉しそうだ。 「さようなら」 「さよならー」  文哉は洞窟を出て、雑木林の前の道に出た。文哉は後ろを振り向いた。だが、そこに洞窟の入り口はない。きっと、ドラゴンは見せた幻だろう。  文哉が家に戻ってくると、そこには母がいた。母は、突然いなくなった文哉を探していたようだ。 「文哉、朝からどこに行ってたの?」 「いや、何でもないよ」  だが、文哉は笑みを浮かべて何も言わない。それを見て、母は思った。きっと、忘れられない出会いでもしたんだろうか?  ふと、文哉はパジャマの下着のポケットに何かが入っているのに気が付いた。文哉がポケットからそれを取り出した。それは緑色の玉だ。行った時には何もなかったのに。まさか、ドラゴンが秘密でくれたプレゼントだろうか? 持っていると、何かいいことがありそう。ずっと大事にしていよう。
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