夏の魔物と密かな恋

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「それ、高校野球だよね?」  私はパパの目の前にあるノートパソコンの画面を指差した。  画像がちょっとぼやけてて古い映像みたいだけど、写っているのは高校野球の試合だ。動画のタイトルには『端島高校対陽聖館』と表示されている。 「あ、……ああ」 「パパ、野球嫌いだったんじゃないの? なんでそんなの見てるの?」  問い詰めるつもりはなく、ただ純粋に質問を投げかけた。だけど、パパは取り調べを受けている犯人のような顔をして、ぽつぽつと気まずそうに白状した。 「別に好きで見てたんじゃないんだ。同窓会で会ったやつに押し付けられて」 「ああ……」  言われて私は納得した。  そういえばパパは、お盆の時期に同窓会があるんだとか言って単身地元に戻っていたっけ。  翌日の昼にはもう、パパは長距離運転で疲れたと言ってソファで寝ていた。そのくたびれたようすに、私はこっそりを胸を撫で下ろしたんだ。  だって、信じてないワケじゃないけど、同窓会での久々の再会からはじまる浮気とかあるじゃない? 私はそういう心配をしていた。ママはなんでもない顔でパパを送り出していたけれど、本当はめちゃくちゃ気になってたんじゃないかな。  決してイケメンとは言えないけれど、パパは周りを元気にさせる力を持ってる人だから。意外とモテるんじゃないかと思うんだ。
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