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「ねぇ、パパ。パパはいつ出てくるの?」
「えっ……となぁ。もうすぐ出てくるよ」
歯切れの悪い返事に首を傾げていると、画面には応援団が映った。なるほど、グランド整備をしている間は試合が動かないから、こうやって応援している人たちにカメラを向けるんだ。
『それでは、端島高校の応援団長を務めています津田君にお話を聞きます。津田君から見て、選手たちの調子はいかがでしょうか?』
「えっ! 津田君って、パパ⁉」
聞き馴染みのある名前と声に画面を凝視すると、そこには全身からやる気が満ち溢れている若々しいパパがいた。
『はい! 神林はよく相手の強力打線を抑えてくれていると思います。ここからは気合です! ぼくたち応援団がみんなを後押しします!』
「おう……」
「パパ、選手じゃなかったの?」
「長ラン、よく似合ってるだろ」
似合ってるよ。似合ってるけどさ。パパ、選手でもないのに、繊細に今まで高校野球を避けてたの?
『それでは津田君、気合のエールをお願いします!』
『応援は必ず力になります! 端島高校――――――!』
パパの声に太鼓の音が重なり、周囲の高校生たちがぎゅっと画面内に集まってくる。彼らのボルテージがこれ以上ないくらい高まった時、『ファイ!!!!』と大きな声が響いた。
「格好いいと思うよ。パパも」
「そうか」
「うん」
なんかコスプレっぽいけど、昔はこれがフツーだったんだろうね。文化部の幽霊部員をやっている私には、誰かのためにこんなに一生懸命になれるパパが輝いて見えた。
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