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過去と、今
昼休みの教室は騒がしい。スマホから流れてくる音楽や人々の話し声、窓の外からは小鳥のさえずりが聞こえてくる。
いつもなら窓辺で友達と話しているのに今日はぼんやりと自分の机に座っていた。
「どうしたの? 麗那ってば。朝からずっーと上の空じゃない」
向かいの席に座った友達の未亜が私の顔を覗き込む。
「あ――未亜…」
「何かあったんでしょ? 絶対に。麗那がぼっーとしてる時はいつもそう」
小学生から一緒にいる彼女は全部、お見通しだ。私に好きな人が出来たときも、失恋したときも気づいていた。
そして、片手に持った紙パックのジュースを置きこう尋ねる。
「何があったの?」
「…告白された」
「え⁉ 誰に⁉」
「幼馴染の晴都」
「良かったじゃん。やっぱ両想いだったんじゃーん」
嬉しそうに私の頬を未亜はつつく。
でも私の心は晴れやかではなかった。むしろ、今にも雨が降り出しそうな天気。
「もちろん、返事はOKだよね?」
「ううん。まだ、返せてない…」
「どうして⁉ 好きなんでしょ? 麗那も」
「そう…だけど」
私もちゃんとした理由は分からない。たぶん、あんなにも綺麗な顔に迫られたに違いない。そう、自分で言い聞かせている。
でもどこか引っかかる小さな違和感を誤魔化すことは出来ず、心に嵐が訪れたことは無視できなかった。
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