勝ったら

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勝ったら

「私に勝ったら、1つだけ凛久のお願いを聞いてあげる」  頬杖をした幼馴染が、ある日そんなことを俺に提案した。  今は昼休み。窓からは秋の日差しが降り注ぎ、彼女の茶色の髪を照らしていた。 「急に何? そんなこと言い出して」  飲んでいたレモネードから口を離し、俺は質問する。 「前にさ、1回凛久が私のお願い聞いてくれたじゃん? だからそのお返し」 「あー、テストの点数で勝ったらってやつか。え? マジで? いいの? 俺、絶対に勝つわ」 「えー? ほんとかなぁ? 私、かくれんぼだったら絶対に勝てる気がするけどなぁ」  かつて、幼稚園時代のかくれんぼで負け知らずだった彼女についたあだ名は『かくれんぼの天使』。隠れている場所は至って変わった場所ではなかったが、皆が見落としてしまうような場所に隠れるかくれんぼに天性の才能を持った少女だった。 「かくれんぼかあ…」 「そうだよ。でも、見つけられたらお願い聞いてあげる」 「ほんとに? 何でも?」 「うん。何でも!」 「えー…? 前、俺なんのお願い聞いたっけ?」 「えー? 忘れちゃったの? 『期間限定のココアをおごって!』だったじゃーん」  そんな可愛いお願いだったけ? と、思わず俺は頬が緩んだ。 「俺はそんな可愛いお願いごとじゃねえかも」 「まあ、勝ったらだから!」  自信満々に笑う彼女につられて、俺も口角が上がる。  一色梨那、幼稚園から仲で中学生の今に至るまで一緒に過ごしてきた。そんな彼女に俺は想いを寄せていた。  だが、その想いは叶うことのない儚いものだった。 「
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