ソフトに強引

12/32
前へ
/32ページ
次へ
「昨日は大リーグはなかったわ」 「そうだね。そうなると共通の話題がなくって困るね」 「…………」  同じオフィスビルに勤める野球好きな男女。交流会がなければ交わることは無かっただろう二人。 (こういうときこそ営業らしく話を振りなさいよね)  無言の時間は居心地が悪い。気を遣っているみたいで嫌だけれど、私の方から口を開く。 「浅井も野球やってたの?」  半袖から覗く腕とか、チェーンが光る鎖骨の辺りとか、浅黒く日に焼けた肌と意外にがっしりとした腕は、運動経験者の空気を醸し出している。もしくはキャンプとかアウトドア好きか。  けれど浅井は首を横に振った。 「野球は好きだけど野球部じゃなかったよ。俺、坊主になるの嫌だったから」 「……らしいわ」  そうだ。チャラい男はチャラい理由で青春なんてしないのだ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加