ソフトに強引

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 浅井はハンバーガーにかぶりついて「昨日の大谷観た?」と訊いてきた。 「うん! 観たみた。特大ホームラン打ったじゃない」 「一目でホームランって分かったもんな。あれはでかかった」 「あの兜姿も様になってきたわよね……って」  言葉を切って、もぐもぐと口を動かす顔を睨む。 「何であんたと大谷くんの話をしなきゃいけないのよ」  大谷くんというのは勿論大リーグの大谷翔平くんのことだ。連日投打に大活躍、野球のことをよく知らない人のことだって虜にするのだ、私みたいな野球好きが応援しない訳がない。正直なところあのファニーフェイスが好みなのだ。最近ではテレビ放送がある日にはわざわざ録画してまでチェックするようになっている。  浅井は大きく口を開け二口目に向かいながら「共通の話題だから」と空惚けた。 「共通の話題? まぁ、そう言えばそうだけど」 「それとも仕事の話が良かった? 最近忙しい、とか」 「どうせ私の仕事の話したって分からないでしょ」 「うん。だから大リーグ」  大きな口でどんどんと消費されているハンバーガーはもうすでに半分くらいになっている。私も自分のサラダに戻った。
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