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「ダメよ」
二十回を過ぎたときから数えるのを止めた。
「まだダメ? 頑張るね」
「浅井こそ本当にしつこいわね」
「うん。それが俺の取り柄だから」
「しつこさが?」
浅井は「一途さが」と言い直して笑顔を作った。
浅井和喜は同じオフィスビルに入っている小さな広告代理店Sメディアの営業だ。二ヶ月前、そのSメディア主催で開催された異業種交流会に会社命令で参加し少し会話をして以来、何故か付き纏われている。その場では特別良い印象があった訳でもなく、単なる参加者——主催者だけれども——の一人でしか無かったのに。大体異業種交流会というものはそういう出会いの場ではないはずなんだけれど。
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