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 だがもうその日記帳に日記は書かれていなかった。しかし気になることに最後の日付の次のページは雑に破かれていた。 「お姉ちゃんが破ったのかな?」  破られた後を手でなぞりながら分かるはずもないことを呟く。  そして陽南はその手でもう一度日記を遡った。日付は十二月八日。もう一度書かれた日記を読む。 「『もしかしたら私はとんでもないことをしてしまったのかもしれない』とんでもない事って何だろう」  それは陽南が思っている以上の事かもしれなければ大した事ではないのかもしれない。だが答えどころかヒントすら知らない彼女にそれがどちらかを判断する術は無かった。 「もしあたしの知らない何かがあるのだとしたら……」  そう呟きながらページを捲り一月十五日の最後の日記を読む。文字を読みながら頭の中ではあの日の澪奈を思い出していた。 「あんなに楽しそうだったのに、お姉ちゃん何があったんだろう」  考えれば考える程、分からなくなっていく。それはまるで、藻掻けば藻掻くほど沈んでいく底なし沼のようだった。それから陽南は日記を読み返したり事件後に受け取った澪奈の所持品を調べたりしながら明日の返事について考えていた。  ――次の日。正午。  …… 「分かってます。ですが私は引き受けようと思います」 「本当にいいんだな?」 「はい」 「では明日SRMまで来てくれ。それまでに準備は済ませておく」 「分かりました。では失礼します」  スマホを耳から話した陽南は傍に置いてあった写真を手に取った。そこに映っていたのは並んで笑みを浮かべる澪奈と陽南。 「お姉ちゃん。あたしはお姉ちゃんが何を謝ってたのか、何を悩んでいたのかが知りたい。もし何かあるんなら――出来ることならお姉ちゃんの代わりに解決してあげたい。まぁ出来るかは分からないけど。――でもあたしは少しでもお姉ちゃんに恩返しがしたいんだ。だからさ。バカなことしたって怒らないでね」  すると陽南は写真を脚の上に置きジュエリーボックスからハリネズミのネックレスを取り出した。 「それとあたしのことを見守っててね」  そう呟きながら視線をハリネズミから天井へと移動させた。
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