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「続きまして……」
司会が次の項目に移ろうとする中、あの男が壇上に上がりマイクの前に立った。
それに対し辺りの職員を見たりと焦る司会者。その様子から男が壇上に上がることは予定されていなかったのだという事が伺えた。
「突然壇上に上がり申し訳ありません」
堂々とした声で話し始めた男はまず突然の事を詫び、会釈程度に頭を下げた。
「ですがつい先ほど川路警視総監と吉川校長から許可を頂きましたのでほんの少しお時間を頂きたいと思います」
そして続けて男がそう説明すると司会者へ向けて警視総監と警察学校校長は手を軽く上げ簡単な肯定をした。それで安堵したのか司会者はマイクから一歩下がった。
「まず初めに皆さんご卒業おめでとうございます」
言葉の後に深く頭を下げたその姿は心から祝福しているといった様子だった。そして彼が頭を下げ――上げるまでの間で、微かにざわついていた講堂内は再び静寂を取り戻す。
そして改め卒業生を見つめる双眸は未来まで見通しているかのように堂々たる眼差しだった。
「私はSRM日本支部支部長、伊勢知真と申します」
するとその肩書に卒業生は再度、僅かなざわつきを見せる。それは陽南と優奈も例外ではなかった。
「えっ! SRMってあの宇出島を管轄にしてる人達じゃん」
「確か警察や自衛隊からエリートを集めてるとこだよね?」
「エリート中のエリートよ」
「そんなとこの人が何しに来たんだろう?」
他の卒業生同様に疑問こそあったものの陽南はどこか他人事だった。
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