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「では余りお時間を頂く訳にもいきませんので早速本題に入らせていただきます。本日ご卒業予定の雨夜陽南さん。ご出席でしたら至急、私の部下の所へお越し下さい」  和真は先程自分が立っていた場所――警視総監と警察学校校長の席より後方の壁側を丁寧に指し示しながら多少のざわつきなど関係ない声で続けた。 「ええっ! 雨夜陽南って……。私?」  その声は驚きを隠せてはいなかったものの息を潜めるようにまだ小さい。そんな小声と共に陽南は優奈の方を向き自分を指差していた。 「アンタ以外いないでしょ? その名前」 「えっ? えっ? で、でも何で私? もしかしたら同姓同名の子がいるのかも」 「知らないわよ。それにいないでしょ? それよりもアンタ一体何したのよ?」 「何もしてないよ。助けてよ優奈ぁ」  泣きつくように優奈の腕を掴む陽南。 「無理よ。というか何から助けるのよ」  だが陽南とは裏腹に優奈は落ち着いていた。 「突然のことで戸惑うのも分かりますが、貴方を何かしらの罪に問おうなどということでは決してありませんので安心して下さい。それと校長の許可も既に頂いていますので、その辺りもご安心下さい」 「だってよ。それに何も疚しい事がないなら堂々と行けばいいじゃない。ほら、あんまり迷惑かけたら本当に捕まるかもしれないわよ?」  冗談交じりに優奈は彼女を肘で突いた。 「えぇー。でも……。――まぁ、何も悪い事してないし」 「そうよ早く行きなさいって」 「はぁ」  最後に大きく溜息をついた陽南はゆっくり立ち上がると会場中の視線を感じながら知真が指した所へゆっくりと足を進めた。その姿を壇上から見ていた知真は一度部下の方へ顔を向けた後、再び正面に向き直す。
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