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ぼくがにおいを嗅ぎながら歩いていると、前方から人間が歩いてきた。
見た目から判断すると、性別はオスで成熟済み。満月のように丸い顔、広い肩幅、シャツというものを着ていてもわかるほどの三段腹。
ご主人様だ!
ご主人様もぼくに気付いたのか、小走りになって駆け寄ってくる。においはますます強くなってくる。
「あっ、お前、こんな所にいたのか! 探したんだぞ!」
「ワンッ!」
ぼくを抱きしめるご主人様。においは最高潮に達する。
個性的な見た目だけど、においはもっと個性的。
鮒寿司、くさや、シュールストレミング、エポワスチーズ、サルミアッキ、ドリアン等、ぼくのような犬はもちろんのこと、人間でもご主人様以外、なかなか食べないようなものを好んで食べるし、さらに、みかんの絵が描かれた香水を吹きかけているからか、他の人間にはない、ユニークなにおいがする。
だから、よほど遠く離れていなければ、ご主人様の居場所は必ずわかる。
唯一無二のにおいを持つご主人様。
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