あなたとこれからも

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 が、彼も同様に引っ越す、と言い出したので驚いた。曰く、『引っ越すなら今の家からなるべく離れた方がいい。でもそうなると俺と離れることにもなる。よし、俺も引っ越そう』だそうだ。  本当は、『一緒に住めばいいんじゃない』と目を輝かせて言った彼を慌てて止めた。まだ付き合いだして全然時間が経っていないのに、さすがにそれは気持ちが追い付かない、と思ったからだ。  じゃあ、せめて同じアパートやマンションに住むようにしよう、と提案された。出勤するときも帰りも彼が守れるから、だそうだ。その提案は断る理由もなく、私たちは二部屋空いている物件を探し回った。  さすがに条件が絞られるので、候補数も少ないが、一応まずまずいいところも残っている。  とりあえず一旦持ち帰り、私の部屋でゆっくり相談しよう、という流れになった。『じゃあ、また泊まってってもいい?』とさらりと聞かれ、断れるはずもなく頷いた。  帰りにお店で晩御飯をテイクアウトし、二人でゆっくり食事をした。お風呂に入ったあと、お酒を嗜みながらこうして相談している最中、というわけである。  私は資料を眺め、手にチューハイを飲みながら心で呟く。
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