心の傷と今の恋

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 そうして大学三年の頃、私は部長になり、サークルをもっと楽しい場所にしたいと気合を入れていたころだ。  新入生で、ある女の子が入ってきた。  それはもう、全員が一瞬見惚れてしまうほど可愛い子で、いつもふわりと揺れるスカートやピアスをつけ、にこにこしていた。  そして性格は、私とは正反対だった。  彼女はどこか不安定で、頼りなさが見えた。困ればすぐに男性に声を掛け、助けを求めた。悲しいときは素直に泣き、周りに頼る。しっかり者と呼ばれた私とは、まるで違う人だった。  案の定、男性たちはみんな彼女のことが好きになり、それまでみんなでバカをやっていただけの平和なサークルがぎすぎすしだした。だが少し経ち、その状態は落ち着くことになる。  彼女がある人と付き合い始めたからだ。  それは一斉にサークル内に広まり、あの子を狙っていた男たちも、嫉妬していた女たちも黙り込んだ。ただみんな無言で、私の方を見てひそひそと何かを話していた。  私の彼氏が、あの子と付き合いだしたから。
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