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それまで毎日あった連絡が来なくなったな、とは思っていた。デートの回数も減り、話しかけてもそっけない返事が多かった。一緒にいてもスマホばかりを気にして、いつも上の空。
そんなある日、彼に言われた。『ほかに付き合いたい子が出来た、別れてほしい。あの子は伊織と違って女の子らしくてかわいいから。伊織は俺に頼ることはしないし』
それがあの子だった。詳しいことは知らない、ただ二人はすでに深い仲なんだというのだけは分かった。どうしようもなく別れを受け入れると、すぐに彼らは付き合いだし、サークル内で手を繋いだりしていた。
メンバー全員の公認カップルだった私たちの破局を、周りはどう扱っていいか分からなかったようだ。
私の方は捨てられて、後輩にとられた。あんなに仲がよさそうだったのに。
そんな憐れみの視線があまりに辛かった。でも私は部長として、サークルを抜けるなんて無責任なことはしたくなかった。何事もなかったように明るく振る舞い、しっかりと部長としての務めを果たした。
それでも一度だけ、あの子はみんなの前で急に泣き出した。『先輩が睨んでくる、私が悪いことをしたせいで』……。
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