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彼も私のことを好きだ、というのは久保田さん以外からも言われたことがあるから、自分では複雑な気持ちになる。
こんな自分が、あの三田さんに選ばれるとは思ってない。でも周りから言われると、奇跡が起きたんじゃないかと信じてしまう自分もいる。単純だな、懲りないやつだ。
でも、三田さんが笑顔で話しかけてくれると、やっぱり彼の特別になりたいと願ってしまう。恋はこりごりだと思っていたのに。
仕事が終わり、荷物をまとめて部署を出た。今日も忙しかったなあ、でも大きなミスもなく一日を終えれた。そう胸を撫でおろしながら、長い廊下を歩いていると、背後から声がした。
「岩坂!」
振り返ると、三田さんが私を追いかけていたので驚く。昼間に久保田さんと話した内容が脳裏によみがえり、一人でどきどきしてしまう。
「三田さん、お疲れ様です!」
私に駆け寄ってきた三田さんは、白い歯を出してにこりと笑った。その手には荷物などはなかったので、まだ帰宅するつもりはないらしい。何か用があるようだ。
慌てて言った。
「何かありましたか? 私が作った資料に不備など」
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