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この年になると、誕生日当日は暇をしていることは多い。その前後で友達が祝ってくれたり、実家から祝いの電話があったりするが、平日は普通に一人で過ごしている。しかし今年は日曜日。会社が休みの日の誕生日は、そう多くない。
まさか、三田さんから誘いが来るなんて。
「どうしよう、深く考えないほうが」
「みーたーぞ!」
突然、そんな嬉しそうな声が聞こえてきた。近くの自動販売機の影から出てきたのは、久保田さんだった。彼女は片手にコーヒーを持ったまま、私に表情を緩めながら近寄ってくる。
「ちょっと! ほら、言ったじゃん、上手く行きそう!」
「そ、そんな」
「来週の日曜日って、伊織ちゃんの誕生日じゃん! 特別じゃないわけがない!」
「三田さんは知らないのかも」
「去年、私が食堂で奢ってあげたのを見て聞いてきたじゃん! 『今日誕生日なんだ?』って。三田さんきっと覚えてるよ!」
興奮したように久保田さんが言ってくる。もし覚えてくれてたとして、私を誘ったのだとしたら、これほどうれしいことはない。
そしてやはり、変な期待もしてしまう。聞いてもらいたいことって、なんだろう?
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