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しみじみとそう言ったのを聞いて、一瞬嬉しく思った。それは久保田さんがいい人だと褒められた喜びだったが、同時にすぐにもやもやした気分になったのだ。
森さんを家に泊めてしまった時、久保田さんを呼んでくれたことで、透哉さんが彼女をとても信頼しているということは分かっていたけれど、やっぱりかなり信頼を置いているらしい。
それは当然のことで私も凄く嬉しいこと。だけどーー
「伊織? どうした?」
「い、いえ、あの……久保田さんじゃ勝ち目がないと思って」
「へ?」
「つ、つまらない嫉妬です、ごめんなさい」
顔が真っ赤になって頭を下げた。どこに嫉妬しているんだ私は。でもだって、久保田さんは私にとっても大好きな人だからこそ、敵わないと思ってしまう。
しばらくぽかんとしていた透哉さんだが、すぐに手で顔を覆い、天井を仰いだ。呆れられてしまった、と慌てる。
「ごめんなさい、ほんと、何言ってるんだって感じですね!? あの、久保田さんも透哉さんも凄く大事な人で、だからこそ複雑になってしまったと言いますか、もうほんと情けない」
「こら」
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