あなたとこれからも

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「もう食わない、って絶食を宣言してた俺を変えたのに、本当に平凡だと思ってんの?」  透哉さんはそう言うと、そのまままた私の唇にキスを落とした。何度も何度も、それはまさに食べて味わうかのように、彼は繰り返す。  不思議だな、と思う。  今年の誕生日の日、私は全く違う男性と結ばれることを心待ちにしていたというのに、今はもう透哉さんしか見えない。この人だけはこれから先もずっと信じて行こうと思っている。  隣にいても恥ずかしくないくらい、これからもっともっと成長していきたいと思える、そんな人。  そっと離れて見えた彼の顔は、完全にスイッチが入った顔になっていた。初めて見るその表情に、ぐっと自分の中の何かがあふれ出る。  透哉さんが立ちあがり、近くにあるベッドまで行き腰かける。 「おいで」  彼に呼ばれ、私は小さく頷く。まだ半分以上残ったお酒もそのままに、ゆっくりと移動し彼の正面に立つ。そんな私の右手を、透哉さんは優しく握った。  そしてその手を引かれ、ベッドに倒れこんだ。
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