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見上げると、どこか嬉しそうに私を見下ろす彼がいる。私の乱れた前髪をそっと撫でつつ、思い出したように言った。
「明日も休みでよかったね」
「そ、そうですね」
「明日あのケーキ屋でケーキでも買って食べない?」
「いいですね!」
「それから物件も見てみて」
「はい」
「つかやっぱり借りる部屋一つでよくない?」
「そうで……じゃないです! それは断ったはずです!」
危うくイエスと言いそうになった自分を慌てて止めた。透哉さんは目を細めて笑う。
「引っ掛かんなかったか」
「勘弁してください、やっと付き合いだしたところですよ!」
「だっていずれ絶対そうなるのに、金も勿体ないじゃん」
「ぜ、絶対そうなるって……」
何があるか分からないのに? そう思って不安げに彼を見ると、にやりと笑われた。
「これだけ手を尽くしてようやく手に入った物を、俺は一生手放す気はないからね」
そう言って、彼は愛しそうに私に口づけた。
ずるい。そんな言い方をされたら……
分かりました、って言ってしまいそうになる。
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