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慌ただしく動く営業部内は、今日も活気であふれていた。
私は手元にある資料に漏れがないかを何度も確認し、ほっと息をつく。ミスをしたら大変だから、確認は何度かしないと気が済まないタイプだ。しかもこれは、私が使うわけではないのだし。
昔から慎重派で、時々真面目過ぎる自分が嫌になることもあったが、この会社に入ってからは前向きにとらえている。というのも、この性格を褒めて貰うことも多いからだ。
「三田さん、これ完成しました」
私は立ち上がり、三田さんのデスクへ歩み寄り、完成した資料を差し出した。くるりと彼がこちらを振り返り、優しく笑った。途端、どきりと自分の胸が鳴る。
「おお、ありがとう! さすが岩坂は早いなー!」
「い、いえ」
「マジでミスもないしさ。ありがとう」
「とんでもないです」
小さく頭を下げ、自分のデスクに戻る。隣に座っていた久保田さんが私ににやにやしながら耳打ちした。一つ年上の先輩で、普段から仲良くしてくれている女性だ。
「よかったね! さすが、息ぴったり」
「め、滅相もないです!」
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