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指導係ということもあってか、一緒に過ごす時間も長く、よく会話をするようになった。今はもう彼に教わることはあまりないが、私よりたくさん案件を抱えている三田さんの手伝いに入ることは多い。
もちろん三田さんだけじゃなく、いろんな人のサポートに回ったりもするのだが……。
「岩坂さん」
「あ、はい!」
突然呼ばれて振り返る。そこに立っていたのは、すらりと高身長で、きりっとした目元をした柚木さんだった。
彼の手には、これまた私が作成するのを手伝った資料がある。
「これ、よくできてる。正直手が回ってなかったから助かったよ」
「いえ! 柚木さんはそりゃやること盛りだくさんでしょうから! 自分の手が空いた時はいつでも手伝います」
「ありがとう」
そう言って少しだけ口角を上げると、柚木さんは去っていった。その後姿をぼんやり見つめながら、オーラがある人だなあ、なんて思う。
三田さんと同期の柚木さんは、営業部の絶対的エースだ。成績は勿論の事、リーダー素質もあり、顔もよく、人を気遣える。いつだったか三田さんは、『柚木は完璧すぎて引く』と言っていた。
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