4347人が本棚に入れています
本棚に追加
/293ページ
どこかクールで掴めない人。当然ながら女性社員にモテモテなわけだが、女の影は一つもない、不思議なお方だ。噂によれば、恋愛に興味がない絶食系だという。これだけの武器を持ちながら、恋愛に興味がないなんてもったいない。私が柚木さんなら、多分美女と付き合いまくってるのに。
「あれー? 浮気だよー?」
隣からからかうように久保田さんが言ってきたので、驚いてそっちを見る。
「な、なんでですか!」
「柚木さんに見惚れてちゃだめよー」
突っ込みどころが多すぎてどこから反論していいのか分からない。とりあえず、私は見惚れていたわけではない。いや、すごい人だなあって芸能人を見るような視線は送ったが、柚木さんなんて、住む世界が違いすぎるので、恋愛対象ではないのだ。
それに、浮気、だなんて――
「あ、そろそろ昼いこっかなー。伊織ちゃん食堂行かない?」
「行きたいです!」
私はカバンを持って立ち上がった。
注文したからあげ定食にかぶりつきながら、美味しさに頬を緩めていると、突然久保田さんが尋ねてきた。
「で、そろそろ三田さんと付き合うことになった?」
最初のコメントを投稿しよう!