心の傷と今の恋

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 どこかクールで掴めない人。当然ながら女性社員にモテモテなわけだが、女の影は一つもない、不思議なお方だ。噂によれば、恋愛に興味がない絶食系だという。これだけの武器を持ちながら、恋愛に興味がないなんてもったいない。私が柚木さんなら、多分美女と付き合いまくってるのに。 「あれー? 浮気だよー?」  隣からからかうように久保田さんが言ってきたので、驚いてそっちを見る。 「な、なんでですか!」 「柚木さんに見惚れてちゃだめよー」  突っ込みどころが多すぎてどこから反論していいのか分からない。とりあえず、私は見惚れていたわけではない。いや、すごい人だなあって芸能人を見るような視線は送ったが、柚木さんなんて、住む世界が違いすぎるので、恋愛対象ではないのだ。  それに、浮気、だなんて―― 「あ、そろそろ昼いこっかなー。伊織ちゃん食堂行かない?」 「行きたいです!」  私はカバンを持って立ち上がった。  注文したからあげ定食にかぶりつきながら、美味しさに頬を緩めていると、突然久保田さんが尋ねてきた。 「で、そろそろ三田さんと付き合うことになった?」
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