4356人が本棚に入れています
本棚に追加
/293ページ
それをいい方にとらえた人たちは、私たちがもうすぐ付き合うのだと思い込んでいる。
でも、そんな事実はない。
「本当に、私の指導係をしてくれたから、気にかけてもらってるだけです」
「そうじゃないってー。いや、そうだとしても。……伊織ちゃんは好きなんでしょ」
小声で久保田さんが言った。びくっと体が固まってしまう。これではそうです、と言ったようなもんだ。
そんな私を、微笑ましそうに久保田さんが見ている。
「伊織ちゃんから動くのもありだと思うよ。絶対、上手くいくから」
「……そんなことないです。私、特に可愛くないし、どちらかというと仕事ばっかりで、甘えるとかも苦手だし」
「可愛いし、真面目でしっかりしてるのは伊織ちゃんのいいとこだよ!」
久保田さんが目を丸くして言ってくれる。それでも、私は苦笑いを返すことしかできない。
しっかり者、とは昔から言われてきた。上手く手を抜けなくて、誰かに頼れなくて、一人で頑張るのが癖だった。
もうちょっとかわいげがあれば、と自分でも思うのだが、どうも変えられない。
久保田さんは心配そうに顔を覗き込んでくる。
最初のコメントを投稿しよう!