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潮騒
ザザンザザンと音が聞こえる。
うっすら目を開ける。手が見える。ボンヤリした頭がハッキリしてくる。
私の手だ。顔の横に自分の手が投げ出されている。
横向きに寝そべっていると気が付いて、首をひねって上を見る。
真っ黒な空にぽっかりと穴があいたように丸い月が輝いていた。
「え……。どこ……ここ? え?」どういうこと? ガバッと上半身を起こす。
星が……ひとつも瞬いていない。漆黒の布に包まれているように真っ暗だ。怖い。
何もかもを覆い隠している暗闇の中に冷たい満月だけがくっきりと浮かんでいる。手には砂の感触。私、今どこに? ……怖い。なに? 怖い。
キョロキョロとあたりを見回しても、良く見えない。それでもここが海岸だと音と砂でわかる。
誰も……いない、の? ……なんで?
ひ、飛行機……。そうだ! 飛行機に乗っていたはず。
あれ、あの後? ……もしかして事故に? わ、私だけ、生き残った……の? うそ……。そんなはずは……。これは夢? だよね?
ペタリと自分の頭、顔、上半身を順に触り確認する。……どこも痛くないし、怪我もなさそう。ど、どういうこと?
波がユルユルと足にあたり、くすぐったい。すべての感覚がしっかりある。あの後の記憶だけが曖昧なだけだ。
一体、ここはどこで、私はどうなってしまったの?
いい知れない不安に私はすばやく立ち上がる。
すんなりと立ち上がれて、やはりどこも痛くないことに安堵と疑問が胸を支配する。私、飛行機事故に……あったんじゃないの?
潮騒が追い立てるように耳元に響く。
ザザンザザン。ザザンザザン。
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