2 心配な計画(2)

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 実際十子のあの様子では、事件の相談をされるどころか、こちらから出向いても会ってもらえるか怪しいものだ。  まして、あの妙に勘の鋭い御者が邸内をうろついていたらしいなどと話していようものなら、要注意人物扱いの恐れすらある。  田友はぎろりと縲を見た。   「ばかが。要はこのまま百年待っても無駄ということだろうが。だからこっちで考えてやった。あの嬢ちゃんが、家の者でなく警察でもなくおまえに相談するしかなくなるようにな」 「……どんな事件です?」 「嬢ちゃんが大事にしてる物を()って、返してほしけりゃ金をよこせ、男は駄目だ女に持たせろと言ってやる。あそこは使用人には甘い家だ、危険な目には遭わせたがらんだろうよ」  女中が入ってきて、田友の前に茶を置いた。  縲に出た番茶ではなくいい香りの煎茶で、縲の分はなかった。  下がる際の女中の言い訳がましい目つきからして、田友の指示らしい。 (儲かってるくせにけちくさいんだから)  自分のけちくさい文句は心のなかに留めておいて、縲は先刻の話に意見した。 「それはそうかもですけど、でもだからって真っ赤な他人のわたしを信用します?」 「だから本気を見せろ。取り入るためならなんだってやってみせるという気構えで行け。探偵はうそでも下心はうそじゃないんだ、できるだろうが」
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