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§ § §
「え! 十子さま、夕ごはんにもいらっしゃらないんですか」
やってきた女中から話を聞いた縲は、すっとんきょうな声をあげた。
困った。
縲はコンサバトリーの焼け跡を見わたした。
クメは相手にしてくれないし、駒藤はクメへの私怨たっぷりの情報しか話さないし、その他わかったこともわからないこともあって、十子と話をしたかったのだが。
朝から気分がすぐれないという彼女は、結局ずっと自室にひきこもっている。
「十子さま、そんなにお加減が悪いんですか?」
尋ねると、女中は微妙な顔をした。
どうやら体調面はたいして問題ないらしい。
(まさか嫌われた? わたし、何かしたっけ?)
縲はせわしく考えた。
何も思いつけないうちに、女中がさらに言ってくる。
「……あの、夜間出歩かれて迷子などになりませんよう、客室には鍵をかけさせていただきます」
「は!?」
縲はおもわず目をむいた。
しかし、すみませんすみませんと懸命に謝る女中にあたったところで仕方がない。
(わかった! これみんな、女中頭の指図だわ)
それならそれで、策を講じるまでだ。
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