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3 事件の幕開け(4)
十子はまじまじとガラスのむこうの娘を見つめた。
寝間着姿で、心からうれしそうに笑っている。
この秋の夜に、彼女ひとりだけ初夏の日差しを受けているかのように。
「よかった! お体の具合、いかがです?」
どうやってここに来たのか、考えられることはひとつしかない。
彼女は、隣にある客室のバルコニーから飛んだのだ。
足を滑らせれば二階の高さから庭へと真っ逆さま、怪我は避けられないだろうに、それでも。
「──何をしているの!」
十子は自分が青ざめる思いでガラス戸を開けた。
ひゅうっと寒々しい夜風が吹きこんで、体が勝手に震えた。
縲の腕をつかんで引き入れる。
「危ないじゃない!」
急いでガラス戸を閉めて縲に向き合う。
それでもまだ体には寒気が残って、また身震いしそうになる。
まったく何もしていない十子がこのざまだというのに、縲本人はきょとんとしていた。
「でも大丈夫でしたよ? それに客室の扉に鍵がかけられちゃって。わたし、どうしても十子さまとお話したかったんです」
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