3 事件の幕開け(4)

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 縲の腕も寝間着も、ひんやりと冷気を載せていた。  十子は彼女の腕をつかんだまま、暖炉の前まで引っ張っていった。  敷物の前に無理やり座らせる。 「もっと火を強くしないと──でも誰か呼んだら──」  彼女が忍びこんできたと知れば、クメはただではすまさないだろう。  縲がおずおずと手を振った。 「あの、わたしだったら全然平気ですから。華族のご令嬢じゃないんですから、体のつくりが違います」 「そんなことあるわけないじゃない、風邪をひいたらどうするの!」  十子は火かき棒で薪をつついてみた。  火は強くなるどころか、くずれた薪とともにかえって小さくなった。  自分の不器用さに嫌気がさす。  十子は振り返ってベッドから毛布を取り、縲にかけた。  それだけではまだ心配で、彼女の横に膝をついて二の腕あたりをさすりはじめた。 「ひゃっ!」  縲はくすぐったそうに笑った。 「あ、ありがとうございます、でもほんと大丈夫ですから。それより十子さま、お話をうかがっても?」 「ええ」 「じゃすみません、遠慮なく。女中頭さんとちょっと、それから執事さんとも話したんですけど、どうもお互いがお互いを犯人だと思ってるみたいなんですよね。でもそれだと──」
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