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縲の腕も寝間着も、ひんやりと冷気を載せていた。
十子は彼女の腕をつかんだまま、暖炉の前まで引っ張っていった。
敷物の前に無理やり座らせる。
「もっと火を強くしないと──でも誰か呼んだら──」
彼女が忍びこんできたと知れば、クメはただではすまさないだろう。
縲がおずおずと手を振った。
「あの、わたしだったら全然平気ですから。華族のご令嬢じゃないんですから、体のつくりが違います」
「そんなことあるわけないじゃない、風邪をひいたらどうするの!」
十子は火かき棒で薪をつついてみた。
火は強くなるどころか、くずれた薪とともにかえって小さくなった。
自分の不器用さに嫌気がさす。
十子は振り返ってベッドから毛布を取り、縲にかけた。
それだけではまだ心配で、彼女の横に膝をついて二の腕あたりをさすりはじめた。
「ひゃっ!」
縲はくすぐったそうに笑った。
「あ、ありがとうございます、でもほんと大丈夫ですから。それより十子さま、お話をうかがっても?」
「ええ」
「じゃすみません、遠慮なく。女中頭さんとちょっと、それから執事さんとも話したんですけど、どうもお互いがお互いを犯人だと思ってるみたいなんですよね。でもそれだと──」
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