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十子はすっかり楽しくなってきた。
くすくす笑いながら、さらなる縲の反応を待つ。
「だいたい、呼び捨てなんて。友達のことはちゃんと、春さんとか麻ちゃんとか呼んでたのに」
「でもわたしのお友達はトーコって呼んでくれていたのよ。そういう流儀のところだったの」
縲は顔じゅうでしかめっ面になると、ぱっと目をみひらいた。
「──わかった! じゃあずばずば行かせてもらうから、十子もちゃんと答えてよ!」
「ええ、もちろん」
こんなに楽しい気分になったのは久しぶりだった。
十子はもう笑顔を止められなかった。
縲のほうは、気を取り直して真顔に戻っている。
「じゃあまず、今日わかったことを話すわ。あの火事、誰か変な人が外から来て火をつけて逃げたんだったらまだいいなと思ったんだけど、それはなさそうで」
「そうでしょうね。うちには門衛もいるし、忍びこめたところで簡単に入れる部屋ではないもの」
「そうなの。鍵の問題もあるし、犯人はこのお屋敷の人だってことに間違いなさそう。それで女中頭さんと執事さんに話を聞いたんだけど、あのふたり、お互いにお互いが火つけ犯だって決めつけてて。どうなってるの?」
「仲が悪いのよ。相手が邪魔なの」
十子は単純明快に答えた。
縲は鼻を鳴らした。
「嫌われ者同士で仲よくすればいいのに。でも十子から見てどう? ふたりとも、じゃなきゃどっちかは、本当にやりそう?」
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